晴れ舞台の光

Category : SS   
いつもの神威さん家居候ルカさんの話。
マジミラの感動のままパッションで書きました。行ってなくても全然わかる内容です。
ライブを見て、あまりのかわいさかっこよさステージ上での凛々しさに魂が浄化されたといいますか、普段アホな話とか描いててほんとごめん…(でも描く…)と思いましたね…
最後のルカのセリフはステージで本当に言ってたことなんですが、若干うろ覚えといいますかアレンジ入ってますすいません。




「ごめん、あたし行かない」

「は、はあ……」
 いつもの居間で、いつものちゃぶ台を囲み、いつもの神威家メンバーが顔を突き合わせている。
そんな中まわりの皆は言葉なく「ああ~…」という顔をし、ルカはあっさり放ったGUMIの言葉に面食らったように持っていたチケットを握りしめていた。

 ルカが手に持っているのはこの度出演するイベント、及びライブのチケットで、ボカロ界一の規模と謳われる公式主催のそれはそれは大きなイベントのもの。毎年激しい争奪戦のもと出れば即完売、転売されれば瞬く間に数倍の値段に跳ね上がったそんな業界垂涎の良席チケットだ。
 もちろん先約の用事や仕事がある可能性は考えていたし、強制でもなければ興味がないという人もいるだろう。だが他の者──リリィたちはまだ「仕事がある」とか「行けない」とか濁してくれていた中こうもはっきりと「用はないけど『行かない』」と言われてしまうとルカは正直ちょっと凹んだ。

「そうじゃな、それは欲しがってる者に回した方がいいぞ」

 おまけに。淡々とがくぽに胸に突き刺さるとどめの一言を叩き込まれ──手の中の誰も欲しがらなかったチケットはみるみる色を失っていくよう感じられた。



「はあー…」
 とぼとぼと廊下を歩きながらルカは大きくため息をつく。
 そりゃ相手にも事情はあるだろうし、貴重なチケットだからといって皆が皆諸手を挙げて喜ぶものだとは思っていない。
ただ今回のイベントはルカの10周年にちなんでたくさんの見せ場を用意してくれていた──まさに彼女の晴れ舞台と言ってもよかった。学芸会でいい役をもらえた子供のような気持ちで家の者をステージに誘ったのだが、誰一人として「見たい」と言うことはなく、浮かれていた己の傲慢さや自意識過剰の身の程知らずさがただただ恥ずかしくなる。
大人だのなんだの言われる身ではあるが、どうにも、自分の中には甘えた末っ子気質のようなものがあるらしい。
(……家族や同じ会社の人の出演ならまた違ってたのでしょうか……)
 この家の中では所詮自分は他人だしな……なんて今さらながらに拗ねたようなことを考え──ルカはそこでハッとあることに気がついた。

 そうだ、親しくしてるつもりですっかり失念してましたけど私他人じゃないですか。
 ここの人たちって皆うち(クリプトン)の同業他社なんじゃないですか。

 それに対し「ボカロ界一と言われる華やかな大イベント・ただしボカロといっても出演できるのはクリプトンボカロのみ・ルカはその花形主演メンバー・そこへ出演者権限(コネ)で特別に良席へご招待しますね!」って……


(か、感じ悪い────…!)
 思わずさーっと血の気が引くのを感じる。他人事として改めて考えてみると、それってなんだかめちゃくちゃ鼻持ちならなくないですか?嫌味じゃないですか?むしろ、そう思うことすら上から目線になっていますか……??
 なんだかもうとにかくもう、あー!と叫んでルカは頭をかきむしりたくなった。いや、すでに廊下の壁に頭をがんがん叩きつけていた。
見に来てくれない?もうそんなものどうでもいい。ここの人たちに嫌な思いをさせたのではないか?嫌われたのではないか?その事に比べたらそんなことまったくもってたいした問題でありはしない。

「ルカ?」

 頭を抱えてうめきながら廊下にしゃがみこんでいると、不意に背後からがくぽに声をかけられた。
「あっ」
 す、すみません、とどもりながら跳ねるように立ち上がり道をあける。どうやら自室に戻る途中のようで、ルカの奇行に通路をふさがれたらしい。
 ルカはさりげなくかつ素早く壁にぶつけて赤くなった額を前髪で隠し、何事もなかったかのように撮影で鍛えたにこやかな笑顔を浮かべる。危ない、これ以上今回のことで気を遣わせるとさらに評価が落ちかねない…!
「……」
 にこにこ不自然に微笑みながら「さ、お通りください」と急かすルカに、いろいろ察したのかがくぽは己の氷色の目を細め口を開いた。
「なあ、──────」
 続くがくぽの言葉に思わずルカの笑顔が解ける。
不意にひゅっと背筋がのびたような気がして──そして、その言葉にぶん殴られたような気がした。
(…あっ、そうか)
 ひどく恥ずかしい気持ちになって俯き、GUMIたちの態度を、がくぽの言葉をひとつひとつ思い返す。
あの時皆がああ言ったのは……私を、誇りあるひとりの歌い手として認めているからこそ言ったことではないだろうか。
 言葉だけで聞くと突き放すようで冷たいが、細められたがくぽの今の目はとても優しい。
それを見た途端なんだかうまく言えないのだが……曇っていた目が開いて、わかっていたはずの大事なことを今さらになって思い出したのだ。

「……ありがとうございます。私、恥ずかしいですね」
「さて? なんのことだか」

 飄々と首を傾げながらがくぽはルカの横を通り過ぎる。
すれ違いざま、ぽんぽんとルカの肩をたたいた以外は普段通り、いつも通り、何もなかったかのように。

 「なんのことだか」は当日にきっと改めて思い知る。
 だからルカは大きく息を吸って吐き、もう今回のことを、ここの人たちの存在を「忘れる」ことにした。
 彼女たちは……彼は、頭の中からきれいさっぱり消し去ってその日を迎えることにしたのだった。



 *   *   *

「ルカさん、出番ですっ」

 真夏の酷暑もかくやとばかりにライブ会場にはライトと音と熱気が渦巻いている。
そんな色とりどりの光にあふれる華やかなステージに立つとたくさんの声がルカの名を呼ぶのが聞こえた。ああ、まるでこの世のものではない夢の世界のようだ。
「みんな、今日は来てくれてありがとう」
 会場は空席など一つもなくぎっしりと埋まり、ルカの眼前には埋め尽くさんばかりにピンクのサイリウムが揺れている。
 あれから浮いてしまったチケットはリセールにて再版したのだがあっという間にSOLD OUTしたらしい。本当に欲しくて諦められなかった人が頑張って競争の中買ってくれたのだろう、本当に有難いと思う。
 揺れるピンク色の波の前で、ふっと残り香のようにあの日の彼の言葉がほんの少しだけ脳裏をよぎった。

『なあ、一番に見て欲しい人を誤ったらいかんよ』

 晴れ姿を本当に見て欲しい人は誰なのか、ありがとうを告げたい人たちとは誰なのか。
どれだけの出来事があって、歌があって、今、自分はここに立っていることができているのか。
学芸会なんかじゃない、小さな世界のお遊戯会でもない。ここは夢と時と縁と奇跡を紡いでできたステージなのだ。
「みんなのおかげで10年間歌い続けてこられました」
 ルカは心の底からの笑顔を浮かべ、万感の思いで気持ちを告げる。

「この先も、応援よろしくお願いします。ありがとう!」

 割れるような拍手の中、ルカはみんなから灯された光に照らされながらその答えを噛みしめていた。



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廊下で会ったのは実はさりげなく気になって追った、的な、やつです。
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